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力強く美しい、魅力いっぱいの「やちむん」を楽しむ

2024.12.22BLOG

「ナゴグローサリーストア」は、沖縄県名護市を含む北部周辺、いわゆる『やんばる(山原)』で活躍する作家さんの作品を扱うセレクトショップです。

「やんばる」とは「山々が連なり、森の広がるエリア」という意味を持ち、
ヤンバルクイナやヤンバルテナガコガネをはじめ、珍しい動物が生息することでも知られています。

地元沖縄に住む方々と工芸作家様、観光のお客様との交流の場である当ストアでは、
雑貨や藍染、ガラスなどの工芸品、弊社が製作している沖縄グッズなどを扱っています。

その中で、最近「やちむん」と呼ばれる陶器が人気です。

「やちむん」とは琉球の言葉で、焼物(「焼き=やち」「もの=むん」)を意味し、
また、沖縄の伝統的な陶器の総称でもあります。

そこで今回は、沖縄の伝統工芸であるやちむんについて見ていきたいと思います。

◯やちむんの歴史と特徴

Nago Grocery Store(ナゴグローサリー ストア)

やちむんの始まりは縄文時代

沖縄の焼き物の歴史は古く、縄文時代にまで遡ります。
沖縄最古の土器は、2013年、南城市の「サキタリ洞遺跡」で発見された
「押引文土器(表面に、へら状の道具で押し付けたような文様のある土器)」
で、約8000年前のものだそうです。


以後、地域や時代によって異なりますが、土器は本土と同様、調理用具、食器、
物を運んだり、保管する器、祭具、棺や納骨容器などに利用されました。

海外貿易がもたらした陶芸技術

中世(11世紀後半頃〜14世紀前半頃)になると、徳之島で焼かれていた
「カムィ焼」や中国産の陶磁器が沖縄へ入ってきます。


カムィ焼は、須恵器(古墳時代中頃、朝鮮半島から伝わった青灰色をした陶質土器)
に似た灰黒色の焼き物で、壺や甕、鉢、碗、水注などが作られていました。

さらに15世紀には、朝鮮、タイ、ベトナム、日本から陶磁器を輸入するようになります。
そのため沖縄の陶器生産は、カムィ焼をはじめとする、貿易などで得た海外の焼き物の影響を受けることで、
技術が向上し、質も高まったと考えられています。

1429年、中山王尚巴志(しょうはし)が琉球を統一し、「琉球王国」が誕生しました。
しかし、尚巴志が没すると、第一尚氏王朝の勢力は次第に衰え、1469年、
当時王府の重臣であった金丸が新国王として即位。
金丸は尚王家を継承し、尚円王(しょうえんおう)と名乗ります。
それ以降の琉球王国は「第二尚氏王統」と呼ばれ、400年以上続くことになります。

やちむんの基礎を築いた陶工

1609年、薩摩藩による琉球攻撃(琉球侵攻)により、琉球は島津氏(徳川幕府)の支配下に入りました。
そのため、今まで盛んだった海外貿易も下火になってしまいます。

これを危ぶんだ尚貞王(しょうていおう。第二尚氏王統第11代)は、
1616年、薩摩から一六、一官、三官という朝鮮人陶工を招きます。

3人は産業振興を促すため、湧田(現在の那覇市泉崎)で製陶技法の指導にあたります。
このうちの2人は琉球を離れますが、一六〜張献功(中国名)はそのまま留まり、琉球に帰化。
仲地麗伸(和名)と名乗り、陶器を作りながら、たくさんの後継者を育て、
琉球独特の焼き物を生み出していきます。

このように沖縄陶業界の基礎を培った張献功は、牧志に陶工村を作り、
後に壺屋に移住することとなります。
彼の足跡がやちむんの原点だといっても過言ではないといえるでしょう。

やちむんを代表する壺屋焼の始まり

1682年、王府は工芸産業振興政策として、分散していた「知花窯」「宝口窯」「湧田窯」を牧志村に統合。
その土地を「壺屋」と呼び、そこで作られる焼き物が現在へと続く「壺屋焼」の始まりとなりました。

当時の焼き物は献上品としても利用されていたため、功績を残した陶工を士族にしたり、
御拝領地や御拝領窯を与えるなど、王府は焼き物作りの発展に積極的でした。
そのため壺屋からは、多くの陶工が誕生したのです。

「民芸運動」で再認識された壺屋焼

徳川幕府が倒れ、明治の世になると、政府は1872年から1879年にかけて「琉球処分」を行います。
これは「琉球の王国制度を解体し、日本国に併合する動き」のことで、最終的に琉球王国は沖縄県になりました。

琉球王府の保護がなくなり、また安価な焼物の大量生産に押されて、壺屋焼の生産は減少してしまいます。

しかし、大正時代に興った「民芸運動」がきっかけで、壺屋焼が注目されるようになります。
これは、1926年、美術評論家の柳宗悦、陶芸家の河井寛次郎、および浜田庄司らによって
提唱された生活文化運動です。


「無名の職人の手仕事から生み出された日常の生活道具には、美術品に負けない美しさがある」と唱え、
沖縄の焼き物を全国に紹介したのです。

このことで壺屋焼は息を吹き返し、沖縄の優れた伝統技術は、国内外に広まって行きました。

第二次世界大戦時、沖縄県は激しい地上戦により大きな痛手を受けます。
しかし、比較的に被害が少なかった壺屋エリアはいち早く復興され、
かつての勢いを取り戻したまま、現在に至っています。

1985年には、壷屋の陶芸家である金城次郎氏が沖縄県初の人間国宝(国の重要無形文化財「琉球陶器」技能保持者)に認定され、壺屋焼は沖縄を代表する伝統工芸品として広く知られるようになりました。

◯壺屋焼の特徴

沖縄を代表する陶器のひとつである「壺屋焼」は、主に那覇市壺屋地区および読谷村(よみたんそん)で制作されています。その佇まいは、どっしりと素朴で力強く、沖縄ならではのおおらかさや温かみを感じさせます。


また、装飾性も豊かで、沖縄独自の釉薬による、カラフルかつインパクトあふれる絵付け、いろいろな技法を用いた意匠も魅力です。

壺屋焼は釉薬や装飾の違いから、「荒焼(あらやち)」と「上焼(じょうやち)」の2種類に大別されます。

荒焼

14~15世紀頃、南方貿易が盛んだった時代、タイの酒の保存容器として作られたのが始まりとされている。
そのため「琉球南蛮焼」とも呼ばれる。
一般的に無釉または鉄分(マンガン)を含む泥釉を用いて焼成。
装飾はほとんど行わず、陶土の風合いが、そのまま生かされている。

用途は酒甕や水甕、壺など大型の容器が中心。

上焼

赤土の上に白土で「化粧がけ(素地の表面を別の土で美しく装うこと。
ほとんどが白い土を用いるので、白化粧とも呼ぶ)」をするのが特徴。

水漏れやにじみ、汚れの防止、色や模様などの装飾を施しやすくするためなど、仕上げに応じて釉薬を用いている。様々な色に発色する釉薬もあるので、焼き方によって色が変化するのも興味深い。
用途は、食器や酒器、急須、鉢、花器といった日用品が多く、壺屋焼の主流を占めている。

装飾については、主に次のような技法が使われています。

線彫り(せんぼり)

成形した粘土に、化粧泥などを施し、その後、ペン状の道具を使い線や模様を彫っていくこと

染付け(そめつけ)

成形した粘土の上に、釉薬を筆に取り、絵を描く技法

盛り付け(もりつけ)

壺などを成形した後、粘土で模様やモチーフを貼り付けていく技法。作品に立体感が出るので、人気が高い。

いっちん(筒描き)

いっちん(繊維の袋に口金具を付けたもの。スポイトなども可)に、化粧泥、泥漿、釉薬などを入れて紋様を描いていく技法。沖縄だけでなく日本各地の陶芸で使われている技法である。

◯復活した「幻の焼き物」も

沖縄では「壷屋焼」のほかにも、県内各地に様々やちむんがあります。
その中からいくつかをご紹介しましょう。

古我知焼

「喜納(きな)」「知花(ちばな)」「湧田(わくた)」「宝口(たからぐち)」と共に、沖縄の古窯のひとつに数えられ、力強く重厚な作風が特徴。1800年代初期には途絶え、「幻の窯」ともいわれていたが、1974年、陶芸家の仲宗根隆明氏により復興。現在は娘の志野氏と共に共同で制作に取り組んでいる。

喜名焼

1670年頃、沖縄県読谷村喜名で作られていた焼き物。表面には泥釉が塗られ、光沢のある焦げ茶色が特徴。壷や甕、碗、すり鉢、瓦などがあり、沖縄陶芸の基礎を培ったが、19世紀末には生産が途絶え、現在は「幻の焼き物」ともいわれている。

八重山焼

八重山焼は、八重山諸島でつくられていた焼き物で、1724年、壷屋焼の陶工で、琉球焼中興の祖とされる仲村渠致元(なかんだかり ちげん)が国王の命を受け、八重山に陶器の製法(荒焼と上焼)を伝えたことで発展した。胎土に貝殻を混ぜた独特の風合いが特徴。

石垣島焼

沖縄で採掘される鉱石を粉にし、透明ガラスをのせて焼成することで、「石垣ブルー」とも呼ばれる美しい青が自然発色する焼き物。黒地に銀色の滴文様が美しい「油滴天目」が施された作品は、美術品としての価値も高く、イギリスの大英博物館に収蔵されている。

パナリ焼

八重山諸島の新城島で、17世紀〜19世紀中頃まで作られたとされる、無文の素朴な土器。新城島が「パナリ(離れ)」と呼ばれたことから、この名がついたという。島の粘土に砕いた貝殻を混ぜ、野焼きで焼成。食物の保存や煮炊きから、水の運搬、骨壷にも使われ、生活に欠かせない焼き物だったといえる。

同じ種類の焼き物でも、窯や作家様によって色や表情、手触り、厚みなどが異なりますので、できれば手にとってみるのがおすすめだといえます。

◯ストアで出会えるやちむん作品

ストアでは、様々なやちむん作品を取り扱っています。主な工房や作家様は次の通りです。

田村窯

大阪府出身、元アパレル販売員の田村将敏氏、愛媛県生まれで元事務員の妻・麻衣子氏が、それぞれ「北窯 宮城正享工房」、「北窯松田米司工房」で修行。2010年に独立し、現在は自宅工房の登り窯で作業を行っている。作風は力強く美しい色使いで、土の質感や温もりを感じさせる、北窯の伝統的技法が基本。現代的な色味やアレンジも加え、のびのびとおおらかな独自の作品を生み出している。

螢窯(じんじんよう)

「じんじん」とは、沖縄の方言で螢のこと。窯を運営するのは、大阪出身の陶芸作家・山上學氏。縄文土器に触れ、焼き物の面白さを知った山上氏は、京都で陶芸と版画を学ぶ。その後、茨城、栃木と巡り、栃木では益子焼を手掛ける。2004年、沖縄県本島大宜味村へ移住。青い海、砂浜や珊瑚をイメージして作られた作品の素材は、海岸に打ち上げられたサンゴや貝殻。独特の形や模様、感性豊かな色合いを醸し出している。

陶藝玉城

2000年から、大宜味村で窯を営む陶芸家夫妻。夫の玉城望氏は、「國場陶芸」の國場一氏に8年、妻の若子氏は、名工小橋川昇氏の元で修行後、金城敏昭氏に師事。主に掻落し(陶磁器の表面を削り、下の色を出して模様にする技法)やタックワサー(盛付けのこと。陶芸品を成形した後、粘土を貼りつけ模様を付ける技法)を得意としており、その技術力はベテランの域ともいわれている。雑器はもちろん、シーサーも制作。

シーサー陶房大海

工房を構える大海陽一氏は、東京葛飾生まれ。観光で訪れた壺屋でシーサーに魅せられ、島袋陶器所の島袋常栄氏に師事する。一体一体、手びねりで丁寧に成形されたシーサーは、それぞれが表情や動きの異なる一点もの。家の守り神としてのシーサーをはじめ、香炉や花入れ仕立てなど数多くの作品は、力強く躍動感あふれる仕上がりとなっている。なお、希望に応じて、特注品の制作も可能。

やがじ荒焼

名護市にある工房で、作家の玉城正明は沖縄出身で、沖縄を代表する画家のひとり、与那覇朝大(よなは  ちょうたい)氏に師事。「やがじ荒焼」は、薪だけを燃料とする「薪窯」による「無釉焼成(むゆうしょうせい。釉薬を施さず、素地そのままで焼く方法)」。焼成中に灰が陶器に付着、ガラス状になる「灰被り」を繰り返すことで、生み出す色や自然の趣きが魅力。工房ではシーサーをメインに、土鈴のような珍しい「たまシーサー(球形シーサー)」などを作成している。

琉球焼  丸勇陶房

イギリスの『大英博物館』に作品を収蔵、沖縄サミットでシーサー作りの実演を披露するなど、沖縄を代表する陶芸家故仲村勇氏の工房。粘土作りから、制作、焼成まで一貫生産。伝統技法に現代的な感覚を加えたマグカップなどの雑器、壷、皿、シーサー、花器ほか、個性豊かな作品を生み出している。オリジナルの釉薬から生じる「窯変(ようへん。窯の炎によって色が変わること)」の美しい色合い、調和のとれた温かさも人々の心を惹きつける。

空〜koo〜  仲田雅也

大阪府出身。2007年、石垣島にて修行を開始。2009年からは「やちむんの里(それぞれ独立した窯元が集まる陶芸の里)」で修行を重ね、2015年に独立。本部町で工房を構え独立。原始的なものにひらめきを感じながら、それを日々の生活を豊かにする器とは何かを考え、作品作りに取り組んでいる。土器を思わせる風合い、艶消し感のある釉薬を用いた作品の数々は、独特の雰囲気を醸し出す。

やちむんには、ひとつとして同じものがありません。作品との出会いは一期一会ですから、ぜひ足を運んでご覧になってください。

◯ひと息つける憩いの場

ナゴグローサリーストアにおいては、今回ご紹介した作家様をはじめ、個人作家様から買い付けするケースも多く、なかなか手に入らない作品もございます。時には長い期間お待たせすることもありますため、入荷のお知らせについては、当店のInstagramを随時チェックされることをおすすめいたします。

なお、『ナゴグローサリーストア』には、カフェスペースも設けられています。「ちょっとすごいコーヒー」「ドン・ルイスさんのコーヒー」「太陽と森の楽園コーヒー」、国内紅茶グランプリで受賞歴のある「金川紅茶」といったドリンクメニューをご用意。お買い物の合間にちょっとひと休みすることもできますので、ストア共々、皆様のご来店お待ちしております。

○ナゴグローサリーストア

・住所:〒905-0013 沖縄県名護市城1丁目4−11 名護市営市場2

・営業時間:10:30〜18:30(14:00〜15:00に1時間の休憩時間あり)

・定休日:不定休(Instagramで要確認)

・SNS(Instagram)

https://www.instagram.com/nagogrocerystore/

オリジナル商品やグッズの製作は
お気軽にご相談ください

琉球ワークス株式会社

〒905-0016 沖縄県名護市大東1丁目1-7 2F

TEL:0980-43-5191 FAX:0980-43-5192

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